相続法改正その3(自筆証書遺言の保管制度)

 

相続法改正の一環として、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(「遺言書保管法」)が制定され、2020年7月10日から、自筆証書遺言に限り、法務局での保管を申請することができるようになります。

 

保管できる遺言書は、
  ①封をしていない、
  ②法務省令で定められた様式で作成された
  ③自筆証書遺言
です(同法1条、4条2項)。

 

自筆証書遺言とは、証人や公証人の関与なく、原則として手書きで作成する遺言書のことで、遺言内容を生前、誰にも明かしたくない場合に活用することのできる簡易な遺言書です(民法968条)。もっとも、要求される方式は、一般の方が予想する以上に厳格ですので、できる限り、弁護士の助言を得ることをオススメします(改正後の方式については、「相続法改正その1(自筆証書遺言の方式緩和)」をご参照ください。)

 

通常、自筆証書遺言はどのような形式の紙に記載してもかまわないのですが、保管申請を検討している場合は、②法務省令で定められた様式に従う必要があります。この様式については、施行までに定められるとのことです。

 

保管の申請は、
  ①遺言者の住所地
  ②遺言者の本籍地
  ③遺言者が所有する不動産の所在地
のいずれかの遺言書保管所で行うことができますが、遺言者本人が自ら出向く必要があります(同法4条3項、6項)。

 

保管の申請には、当然手数料が必要となりますが、現時点でその手数料がいくらなのかは定まっていないようです。

 

保管の申請が行われると、遺言書の原本とその画像データは、遺言書保管所で保管されることになります。遺言者がそれを閲覧することは自由です(手数料はとられますが)。保管の申請を撤回して、保管されている遺言書を取り戻し、画像データを消去してもらうこともできます。なお、保管の申請を撤回しなくても、日付の新たな遺言書を別途作成すれば、保管されている遺言書は何もしなくても撤回されたと扱われます。

 

この遺言書については、自筆証書遺言書遺言で通常必要とされている家庭裁判所での検認という手続は不要となります。

 

遺された相続人としては、施行後は、公証役場だけでなく、遺言保管所に対しても、遺言書が保管されていないかを確認する必要が生じるでしょう。

 

遺言者本人が保管所に出向かなければならないとあるため、病床にある方は利用することが難しいですが(これに対して、公正証書遺言の場合は依頼すれば公証人が病室まで来て作成してくれます)、所定の様式に記載する方法であり、かつ、遺言書保管官がある程度チェックすると考えられることから、保管制度を利用することにより、方式違背により無効になる遺言書は減少するのではないかと思われます。

 

あとは、画像データ保管のセキュリティが万全であることを祈るばかりです。

 

次回は、相続法改正その4として「共同相続の場合の対抗要件」について書いていきます。